もうかれこれ7年前になりますが、「Switch」という雑誌で「スラムダンクーあれから10日後ー」というタイトルで特集をやっているのを見つけて、速攻で購入したことがありまして。(この記事かな?)
あの往年のバスケットボール漫画「スラムダンク」の作家である井上雄彦さんが、廃校になった高校の教室の黒板をキャンバスにして、あの最終話の場面の10日後を描いたイベント。東京まで見に行く余裕は当時の僕にはありませんでしたから、せめて特集に掲載されている井上さんのチョーク画を手元に置いておきたかったのです。
あれから7年が経って。毎月通っている床屋さんで、ふと若いスタッフさんと井上雄彦さんの話題で盛り上がり、成り行きでその「Switch」をお貸しすることになりました。
しばらく本棚の肥やしになっていたその「Switch」ですが、本棚から出してパラパラと特集記事や黒板の写真を眺めてみました。すると、ちょっとしたことに気がつきました。
・・・これ、公開されていた内容、全部掲載されてないよね?
ま、当然と言えば当然です。むしろこんな事に7年間も気づかないなんて・・・恥ずかしいな(笑)。
ということで、ネットで探してすぐに購入しました「SLAM DUNK 10 DAYS AFTER complete」。最近はネットでさくっと書籍が探せて買えちゃうのですね、すごい世の中になりましたよホントに。
で、届きました。オールカラーA3版、結構サイズ大きいです。
表紙に描かれているは、最終話で桜木花道くんが座っていた海岸でしょうか。きっとそうでしょうね。
あれから10日後ー、立て看板ボードに導かれて教室に入ると、黒板にはそれぞれの登場人物たちの10日後が描かれています。現役で連載を読んでいたのはもう15年くらい前で、ストーリーの内容を正直細かく覚えていない自分ですが、読み進めていくうちに各登場人物たちのドラマが甦りました。
内田樹先生が著書「街場の漫画論」の「井上雄彦論」でバガボンドを論じる中で、次のようなお話をされていました。
井上武彦は『SLAM DUNK』でも、年齢に比して以上に幼児的な主人公が、その幼児性ゆえに、ありあまる才能をほとんど致命的に損なうところにドラマの縦糸を通していた。
しかし、桜木くんは、いくら「ガキ」でも、せいぜいバスケットチームのレギュラーポジションから外されたり、試合に負けたりする程度のペナルティしかこうむらない。それでは、少年読者に対する、「おとなになれ」という井上の強いメッセージは届かない。だから、井上雄彦は「ガキは死ぬ」という過激な物語に踏み込んだのではないか、と私は思う。
ああ、そういう解釈もあるのかと思いました。
確かにあの選手生命を奪いかねないほどの怪我を負う結果は、桜木君の刹那的な情熱さ故、つまり幼児的な若さ故だったのかもしれません。たとえ全国大会であったとしても、明日を意識する大人であれば、踏みとどまっていたでしょうね、きっと。
若さ故のエネルギーってあると思うのです。
知見も狭く、向こう見ずだからこその大きなエネルギー、情熱って言うのかな。
もちろん情熱だけではやっていけないこの世界、大人にならなければやっていけないことが沢山あります。学校でたくさんの子ども達の面倒を見る中で、そんな稚拙なエネルギー(誤解を恐れずあえて書こう)に出会い、説諭や助言を与える場面は多くありました。でもそんな場面がある度に、僕は嬉しくなり心が躍っていたのもまた事実です。
「大人になれ」という言葉ではないメッセージを子ども達に送りながらも、僕は「いつまでも失わずにいてほしい」という思いを抱いていました。
そんなエネルギーを、僕はこの本の登場人物たちに感じたのです。
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