1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂〜暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、根拠は何もない。そして19年…。行き詰まる精緻な構成と叙事詩的スケールで描く傑作ミステリー長編!
ふと東野圭吾さんの小説が読みたいなと思い、書店に足を運んで手に取ったぶ厚い文庫本がこれでした。文庫本なのにずしりと重みがあってね、これで頭叩かれたら大きなたん瘤できるだろうな…。いやそんなことを言いたいのではなくて(笑。読み終えるのに一週間強の時間を要しました。
冒頭では廃墟ビルで発見された男性の死体をめぐる捜査について淡々と描かれる中で、様々な人物が容疑者として浮上するのですが、事件は突然あっけない形で幕を引いてしまいます。その後は二人の少年少女の人生が第三者視点で別々に、これまた淡々と描かますが、あらゆる出会いや出来事について「もしや裏で糸が引かれているのでは」という考えるもおぞましい疑念が湧いてきて、頁をめくること自体に緊張が走るようになりました。
東野圭吾さんの作品はこれまでにそれなりの数を読んできましたが、今までで一番えげつなくて、それでいて切なさがこみあげてくる作品だと思います。
「俺の人生は、白夜の中を歩いているようなものやからな」
少年・桐原亮司のこの台詞が強く印象に残りました。このとき彼はどんな思いでこの言葉を口にしたのか、それを思うととても辛い気持ちになります。
余談ですが、この作品はテレビドラマ・映画化されていてですね。小説を半分ほど読んだところで「もう半分ぐらい読んでるんだから、ドラマの第一話だけ見てもいいだろ」と思って、Amazon Primeでドラマの第一話だけ視聴したのですよね。
…心底後悔しましたよ。原作とドラマで構成が違うのって結構よくあるパターンだってことをすっかり忘れてました。もう二度とこういうことしない(;;)。
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